サービス残業」という言葉が,巷ではよく用いられています。定義のはっきりしない言葉ですが,ここでは簡単に,「残業代が支払われない残業」としておきましょう。

サービス残業は,バブル崩壊以降の長期的な不景気で労働者の立場が弱くなったこと等から,近年急速に広まったようです。

使用者側は,労働者に事実上サービス残業を強要し,労働者側も,「月給制の正社員で働く以上,多少のサービス残業は仕方がない」「うちの会社は残業代は出ないと採用時に説明されたので,出なくても適法なのだろう」などと考え,我慢してサービス残業に従事している場合が多いようです。

しかし,(我々弁護士にとっては当然過ぎて言うまでもないことなのですが)

サービス残業は違法(労基法37条1項等に違反)

です。

しかも,労基法に反して労働者に不利な内容を定める契約は無効(同法13条)となるため,

サービス残業は,当事者が納得の上で,残業代は支給しないという内容の雇用契約をしたとしても,変わらず違法

なのです。これが大原則です。

もっとも,法律上,一定の条件をみたせば,残業代を支払わないとか,基本給や諸手当の中に含めて支払うという契約も,有効になる場合があります。

しかし,そのような条件をきちんとみたしている雇用主はまだまだ多くはないため,労働者が「サービス残業」だと考えている時間外労働の大部分は,賃金が違法に支払われていない状態にあると言ってよいと思います。

さて,サービス残業が違法であるという場合,法律上,どのような効果が発生するでしょうか。大きく分けて,以下の2つの効果があります(その他,付加金等の効果もありますが割愛し,次回以降に書きます)。

(1) 未払の残業代を請求できる(民事上の効果)

未払の残業代は,その全額を,雇用主に対し請求することができます。

ただし,賃金の請求権は,本来支払われるべき日から2年を経過すると,時効により消滅してしまうので(労基法115条),

遡って請求できるのは過去2年分のみ

です。

(2) 使用者が6か月以下の懲役又は30万円以下の懲役刑に処せられる(刑事上の効果)

労基法119条により,残業代の不払をした使用者には刑罰が科せられる場合があります。つまり,

サービス残業は犯罪

です。

以上のように,サービス残業は,民事上も刑事上も違法であり,使用者は未払の残業代を支払う義務を負うとともに,刑罰を科せられる場合もあります。

今回は,残業代不払問題の基本中の基本について,簡単に書いてみました。

今後,残業代その他,労働事件の細かい争点についても,順次更新していきたいと思います。

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