離婚と労働事件は、いずれも私が比較的よく扱っている分野だ。

先日このツイートをしたら、けっこう反響があった。

ところでこのようなDV加害者と同じ特徴が、ブラック企業経営者にもよくみられる。

こっちが弁護士をつけて権利主張をする段階に至っているのに、弁護士もつけずに社長自ら私の事務所に電話をかけてきて、

「今まで世話したのにいきなり弁護士をつけて内容証明を送りつけるのは筋が通らない」

とか、

「こんなことまでしなくても、きちんと話し合ってくれれば悪いようにしなかったのに(でももうヘソ曲げちゃったから請求には応じないもんね)」

とか、私を苦笑させるだけの主張を展開する経営者は珍しくない。*1

交渉がまとまらず裁判*2の段階に至れば、さすがに弁護士をつけない企業は少ない。*3

しかし、裁判の場で和解の話になったとき、企業側代理人の弁護士が、「社長が感情を害されているので和解は容易でないかもしれない」といったことを述べるケースも多い。

自分が違法な労務管理をしておいて、権利行使されたら感情を害されたとはまさに盗っ人猛々しい話だ。*4

DV離婚事件と労働事件は、被害者側にも共通点がある。

相談の際に、

「配偶者は・あるいは社長は、弁が立つから・あるいは他人の言うことを素直に聞くような人ではないから、弁護士に依頼しても思うように進まないのではないか」

と心配する人がとても多いのだ。

私はいつも、

「法的にはこちらに理があるので、全く無用な心配です。素人の言い分なんか言わせとけばいいんです。裁判所では通りませんから」

と一笑に付すことになる。

このようにDV離婚と労働事件の当事者が似ている理由は、

いずれもそれまで支配-被支配の関係があったから

と考えられる。

支配している側の主観では、これまで被害者との関係はうまく行っていた。現に何も文句は出ていなかった。弁護士なんかつけて裁判までする必要なんかなかった。なのに今こうなっているのは許せない。

これを支配されている側から見ると、これまで加害者の言うがまま思うがままに扱われてきた。文句など言えばひどい目にあわされるのはわかりきっているから何も言えなかった。今まで私の言い分が通ったことなどないから、弁護士をつけてもうまくいかないかもしれない。

このように見ている世界が全く違うのだ。

支配側にとって平和で一方的に有利だった世界が、弁護士によって*5壊されたことに対する怒りが、「弁護士が入ったから話がこじれた」といった反応につながるのだろう。*6