こんばんは。

ここのところ、札幌出張が続くなど忙しくしており、ブログを放置してしまいました。

札幌出張においては、前所属事務所から引き続き担当している複数の労働審判案件の期日に出廷してきた次第です。

労働審判というのは、平成18年から開始された比較的新しい制度なのですが、急激に普及し、現在では労働事件におけるファーストチョイスといってよいほどの地位を占めている制度です。

ほとんど完膚なきまでに失敗したように見える一連の「司法制度改革」の中で、数少ない成功例の1つかもしれません。

今日も出張帰りで疲労困憊しており、焼酎を飲んでほろ酔いになっているところでもあるので、あまりまとまった論考はできないのですが、以下、何も見ずにパッと思いつくままに、労働審判制度の概要、メリット、デメリットを述べてみます。

【概要】

労働審判は、

労働紛争について、裁判官及び民間有識者からなる労働審判委員会が、当事者の申立により事件を審理した上で、調停による解決の見込みがある場合にはこれを試み、調停に至らない場合には労働審判(裁判の一種。訴訟でいえば判決のようなもの)を行うことにより、紛争の迅速、適正かつ実効的な解決を図る手続き

です(労働審判法1条参照)。

すなわち、労働審判は、

プロの裁判官を含む合議体が、当事者の申立により事件を審理し事実を認定し(訴訟類似の側面)、

そのような事実認定を前提にして、調停による解決が可能な場合はこれを第一とし、

調停による解決が困難な場合は裁判を下す

という建て付けになっているのであり、

民事訴訟と民事調停を折衷したような制度

といえます。

【メリット】

・(調停を目指す手続ではあるが)合議体による審理、事実認定を経るので、単なる駆け引きによる合意形成ではなく、事案の客観的な勝ち筋・負け筋を踏まえた合理的な調停が期待できる。

・上記のとおり事実認定を経ていることから、労働審判を受け入れず訴訟になっても結果は大きく変わらないであろうと事実上予測できるので、労働審判限りで決着する可能性が高い

・原則3回以内の期日で終えることとされており、訴訟に比べるときわめて迅速な解決が見込める。

原則非公開の手続であるため、使用者側も、他の従業員への飛び火をおそれて無闇に強硬になったりせず、柔軟な解決に応じる可能性がある。

・法的権利の枠組みにとらわれない柔軟な解決が可能

【デメリット】

労働審判に対し異議申立があると、自動的に訴訟に移行し、かつ、労働審判手続の結果は訴訟に引き継がれないので、結局労働審判手続は無駄になる(だから、労働審判手続で片付きそうにない事件は、最初から訴訟提起した方が早い)。

解雇事案の場合、金銭解決が暗黙の前提とされており、復職は望みにくい(もっとも、労働審判で復職する例もあるようですが)。

・金銭解決の場合の支払額の水準が訴訟よりも低い

事実認定が緻密さに欠ける

こんなところでしょうか。

メリット・デメリット併記しましたが、基本的には、デメリットよりもメリットの方が大きい手続であると私は認識しています。

私以外の弁護士もそう認識しているからこそ、急激に普及したのだと思いますし。

私の嗜好としても、労働審判はやっていて楽しい(といっては語弊があるかもしれませんが)手続であると思っているので、今後も労働審判は積極的にやっていきたいところです。

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