「30日前に解雇予告をすれば(又は30日分の解雇予告手当を支払えば)適法に解雇できる」
と思っている人はいませんか?私の感覚では,控えめに見積もっても世の中の人の半分以上が,このように思っているように見受けられます。
しかし,これ,大間違いです。
この間違い,労働法に関する一般の方の誤解のうちでも,最も甚だしく,かつ有害と思われるものの一つですね。
結論からいうと,
30日前の解雇予告 or 30日分解雇予告手当支払は,解雇の効力とは全く関係ありません。
すなわち,
30日前に解雇予告していようが,30日分の解雇予告手当を支払っていようが,不当解雇は不当解雇であり,無効
です。
具体的には,裁判所が「客観的に合理的理由を欠き,社会通念上相当と認められない」解雇(労働契約法16条)=解雇権濫用であるか否かを審理し,解雇権濫用であると認められれば当該解雇は無効とされるわけです。
そして,裁判例上,解雇はよほどの事情がない限り有効とは認められず,解雇権濫用と判断される傾向がありますので,
労働者が泣き寝入りさえしなければ,たいていの解雇は無効になってしまう
わけですね。
解雇が無効である場合,理屈上は復職できることになるはずですが,実際上は難しい場合も多く,労働者自身がいったん解雇された職場への復職を望まないケースも多々見られます。
そこで,金銭解決になる場合が,割合としては多数ですね。
金額については一概に言えるものではありませんが,事案により,給料の5か月分~1年分くらいが相場でしょうか。
復職・金銭解決いずれにせよ,不当解雇と認められれば30日分の給料とは比べものにならない利益を得ることができるわけで,「30日前の解雇予告 or 30日分の解雇予告手当支払で解雇できる」などという誤解のために泣き寝入りしてしまうのは馬鹿馬鹿しいことです。
当ブログ読者のうち労働者の方は,解雇されたら直ちに弁護士に相談することをお勧めします。
逆に使用者の方は,解雇してしまう前に,法的に正当な解雇事由があるのかどうか等につき,弁護士に相談することをお勧めします。
独断で解雇してしまって訴えられてから相談に来る方が多いですが,多くの場合手遅れですので。